番犬男子




バイク男がスマホ片手に、倉庫の奥のほうへ歩いて行った。


その姿を横目に、後ろに回されている手首を動かす。



「あ、もしもし?」




電話、か……。



電話している間、バイク男の意識はあたしから外れる。


残るは強盗犯だけど、こいつだけなら古典的なアイデアでも効き目はありそうだ。




するとタイミングよく、するり、とロープから手首を抜き出せた。


ロープが、地面に落ちる。




もしかしなくても、今が逃げるチャンスだ。





あたしは前を向いたまま、最小限の動きで後ろの地面を手探りで触った。


出入りの激しそうなこの倉庫なら、石が転がってるはず。



あ、あった。


実際には見ていないけど、感触的にはちょうどいい大きさの石が手に入った。



石を持って、すぐ立てる準備をする。




< 165 / 613 >

この作品をシェア

pagetop