番犬男子
バイク男がスマホ片手に、倉庫の奥のほうへ歩いて行った。
その姿を横目に、後ろに回されている手首を動かす。
「あ、もしもし?」
電話、か……。
電話している間、バイク男の意識はあたしから外れる。
残るは強盗犯だけど、こいつだけなら古典的なアイデアでも効き目はありそうだ。
するとタイミングよく、するり、とロープから手首を抜き出せた。
ロープが、地面に落ちる。
もしかしなくても、今が逃げるチャンスだ。
あたしは前を向いたまま、最小限の動きで後ろの地面を手探りで触った。
出入りの激しそうなこの倉庫なら、石が転がってるはず。
あ、あった。
実際には見ていないけど、感触的にはちょうどいい大きさの石が手に入った。
石を持って、すぐ立てる準備をする。