番犬男子
隠しちゃうんだ。
綺麗だったのに、もったいない。
前髪の上から左目に触れる稜は、ひどく悲しそうだった。
なぜだろう。
お兄ちゃんの額の傷痕と稜の左目が重なって、胸が痛んだ。
じぃっと凝視していたら、稜の右目があたしを訝しげに捉えた。
「んだよ」
「今度は関心があるんだね」
「は?」
「ううん、なんでもない」
あたしはとぼけた様子で首を横に振り、稜の先を歩く。
「何も聞いてこねぇんだな。この左目のことも、隠してる理由も」
「え?なに?」
「……いや」と、なかったことにした稜に、力なく微笑んだ。
聞こえたけど、聞こえなかったフリをしてあげる。
相手が話したくなさそうにしてる話題に、土足で踏み込むつもりはないよ。
だから、そんな悲しい顔しないでよ。