番犬男子
あたしは遊馬の手を頭から引きはがした。
「もうこの話やめよう」
時間の無駄だ。
幸汰の話よりお兄ちゃんの話が聞きたい。
「照れたのか?」
「違う」
即座に真顔で否定しても、遊馬はニヨニヨしてあたしをからかう。
「遊馬?」
笑顔で睨んであげたら、やっとおとなしくなってくれた。
髪を整えながら、お兄ちゃんの様子を窺う。
お兄ちゃんと幸汰が、繁華街の一番奥の路地に入っていくのが見えた。
「遊馬、追うよ」
「おう!」
あたしと遊馬は一度顔を見合わせて、クレープ屋の大きな看板から身を現す。
お兄ちゃんを追いかけようと、一歩踏み出した。
次の瞬間。
「きゃあっ!!」
お兄ちゃんのいる方向とは反対に位置する、繁華街を抜けて曲がったところで、けたたましい悲鳴が上がった。
あたしも遊馬も無意識に急ブレーキをかける。