番犬男子




あたしたちが今いる現在地の近くだ。


あっちには、強盗犯が強盗しようとしたコンビニがあったはず。




「行こう、遊馬」



あたしはためらうことなく、悲鳴がしたコンビニ方面に方向転換した。


遊馬は意外と言わんばかりに目を丸くする。



「い、いいのか?誠一郎と幸汰を尾行しなくて」


「愚問ね」



さらに目が丸くなった。



なにバカなこと言ってるの。


当たり前でしょ?



「何かが起こってるっていうのに、自分の私情を優先して、のんきにゲームなんかしてられないでしょ」



お兄ちゃんは距離が遠いせいか、あの悲鳴は聞こえなかったようだから、あたしが……侍の妹が代わりに対処する。


先ほどわがままを言って困らせたお詫び、という意味も込めて。




『お前、他人を助けようと正義のヒーロー気取ってんの?』


コンビニ強盗での、強盗犯の耳障りな蔑みが、耳の奥でこだました。



いいえ?

今回も、あの時と回答は同じ。



『ぜーんぶ、自分のために行動してますけど何か?』




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