番犬男子






繁華街を過ぎて、角を曲がり、コンビニ付近に到着した。


そこには、騒ぎを聞きつけてやって来た野次馬が何かを囲んでいた。



遊馬の登場に、外野の女子たちがきゃーきゃーはしゃぐが、今はそんなことどうでもいい。




「くそっ、放せ!」



野次馬の真ん中のほうから、男……いや、男子の抵抗する声がした。



あたしと遊馬は野次馬の間を縫って、押しつぶされながらも、真ん中にたどり着く。


あたしは、生唾を呑んだ。



何、これ。




真ん中には、血だらけのカラスがいた。




近づかなくても、カラスがナイフで刺されたことがわかった。


しかも、1回じゃなく、何回も。



いくつもの無残な傷、歩道に垂れた鮮血、むしり取られた黒い羽。


カラスにもう息はなく、折れた翼はピクリとも動かない。



あまりに非情で、残酷な有様に、心臓をえぐられる。




何、これ。


何度問いても、悲惨な現状は変わらない。



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