番犬男子
「放せっつってんだろ!?」
すぐ横で、男子の怒鳴り声が鼓膜をつんざいて、我に返った。
反射的に目を向けると、両手を赤く染めた1人の男子が、双雷の下っ端2人に腕を掴まれ、拘束されていた。
男子の足元には、カラスをあんな目に遭わせたと思しきナイフが落ちていた。
「お前ら、これ、どういうことだ?」
「あ、遊馬さん!どうしてここに!?」
「んなこと、今はどうでもいいだろ」
遊馬が改めて聞いたら、下っ端のうちの1人が状況を簡潔に説明してくれた。
「パトロールでここを通った時、こいつが、たまたま歩道に下りてきたカラスを捕まえて、急にナイフで刺し出したんです」
あたしも遊馬も、絶句した。
狂ってるとしか思えない。
そのイカれたカラス殺しの男子に、遊馬がガンを飛ばす。
「なんでこんなことしたんだよっ!!」
心底憤っている声色に含まれた殺気は、どこまでも冷え切っていた。