番犬男子
チッ、と舌打ちが響いた。
舌打ちしたのは、言わずもがな、あたしだ。
「バカはあんただよ」
「あ?」
笑うのをやめたカラス殺しの男子が、機嫌を損ねて、あたしに睨みを利かせる。
その程度の睨み、番犬と比べたら可愛いものだ。
「殺すことはもちろん、捕獲するだけでも、立派な罪。鳥獣保護法違反で罰せられる。そんなことも知らないの?」
「!?」
その反応だと、知らなかったみたいだね。
悠々と含み笑いをしながら、「つーか」とカラス殺しの男子の言い方を強調して似せてみる。
カラス殺しの男子は露骨にイラついた。
「なんでそこまで罪悪感感じずにいられるの?ふっしぎー」
「だ、黙れ!」
あんたの言うことを聞く必要がある?
ないよね。
あたしは黙らない。
「『たかがカラス一匹』?人だろうが鳥だろうが、命を奪ったことには変わりないでしょ」