番犬男子





チッ、と舌打ちが響いた。


舌打ちしたのは、言わずもがな、あたしだ。



「バカはあんただよ」


「あ?」



笑うのをやめたカラス殺しの男子が、機嫌を損ねて、あたしに睨みを利かせる。


その程度の睨み、番犬と比べたら可愛いものだ。



「殺すことはもちろん、捕獲するだけでも、立派な罪。鳥獣保護法違反で罰せられる。そんなことも知らないの?」


「!?」



その反応だと、知らなかったみたいだね。



悠々と含み笑いをしながら、「つーか」とカラス殺しの男子の言い方を強調して似せてみる。


カラス殺しの男子は露骨にイラついた。




「なんでそこまで罪悪感感じずにいられるの?ふっしぎー」


「だ、黙れ!」



あんたの言うことを聞く必要がある?

ないよね。


あたしは黙らない。



「『たかがカラス一匹』?人だろうが鳥だろうが、命を奪ったことには変わりないでしょ」




< 298 / 613 >

この作品をシェア

pagetop