番犬男子
そういえば、いつからだっけ。
幸汰のそばにいると、胸のあたりが苦しくなるようになったのは。
脳裏に過去が逆再生され、あるシーンでピタリと停止された。
……そうだ、あの時だ。
双雷ファンの女子たちにリンチされて、殴られそうになったあたしをかばってくれた、あの時。
あたしは幸汰を苦手だと感じなくなって、あたしの心の中に“何か”が芽生えた。
――“何か”って、何?
「千果、さん?」
声をかけられて、我に返る。
原因不明の紅潮が駆け巡り、幸汰へ伸ばしかけていた腕を力ませる。
「あ、ああっ、もう時間だ!行かなくちゃ!」
絶賛うろたえ中だとしても、はぐらかし方、下手くそすぎじゃない!?
内心まごつきながら、180度方向転換した。