番犬男子
「そ、それじゃあ!」
最後なのになんて投げやりな締め方なんだろう。
最悪だ。
でも。
幸汰ともっと一緒にいたいと思ってる反面、逃げたい衝動にも駆られるんだ。
どうしてだろう。
とにかくこの場をあとにするため、早足で歩き出す。
距離が遠ざかるにつれ、心拍数は上がっていく。
「千果さんっ!」
背中に、あたしを引き留める声が投げられた。
直後、左手首を掴まれ、強引に振り向かせられる。
え?
ふわっ、と左の頬に触れる、唇。
それは一瞬で離れて、あたしの胸を締め付けた。
誰の唇か、なんて、すぐにわかった。