番犬男子
ダージリンティーを飲みながら、ふと窓の外を眺める。
雨雫が垂れた窓。
外は、雨が降っていて、暗く淀んでいる。
――一瞬、雨が真っ白な雪に見えた。
錯覚が瞼の裏にまで侵食して、冷たい吹雪を映し出す。
ハッ、と息を浅く吐いた刹那、身体の奥底から記憶の断片が脳裏を駆け巡った。
『お兄ちゃん、帰ろう?』
差し出された、幼い手のひら。
『っ!!』
『千果……!』
崩れ落ちた重い雪と、深くにじむ痛みに、襲われる。
助けたくて。
でも、何もできなくて。
つきまとう傷痕に、涙があふれた。
『ごめん……っ』