番犬男子
数秒も経たないうちに、我に返った。
過去の残像が、途切れる。
なんだったんだ、今の。
昔の記憶?
どれも不明瞭にモヤがかかっていて、反すうしようとしてもできない。
こんなこと、今までなかった。
あの女と会ったからか……?
「総長、大丈夫ですか?」
幸汰が心配そうに顔を覗き込んできた。
大丈夫だ、と平然を装いながら、額の傷に触れる。
俺に妹なんて、いない。
はず、なのに。
どうして、胸が、傷が、ズキズキ痛むんだろう。
「……寒いな」
雨のせいだろうか。
俺の独り言は、ザーザー降り注ぐ雨の音にかき消された。