「ひどい人ですね」

何も言わない伊崎に、ひかるは言った。

「ひどいって…?」

呟くように聞き返した伊崎に、
「何も答えることができないじゃないですか。

私のことが好きだと言ったくせに、どこが好きなのかと聞かれたら何も答えないじゃないですか」

ひかるは言い返した。

「ただの興味と好奇心だけで私のことを好きだと言っているならば、本当にあきらめた方がいいと思います」

「じゃあ、君は好きな人のことを好きだってはっきりと言えるのですか?」

そう聞いてきた伊崎に、
「はい」

ひかるは首を縦に振って返事をした。

ウソじゃなかった。

「笑った顔がかわいいところや美味しいと褒めながら、私が作ったご飯を食べてくれるところ、それから…」

豪の好きなところはいくつでも言える自信がある。
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