「ほっとけないところや一緒にいると楽しいところ、それから…」

好きなところをあげて、それを口に出して言っているひかるの姿は1人の女性だった。

(どうして、僕じゃないのだろうか?)

彼女のその姿に伊崎は自分の胸が締めつけられたのを感じた。

どんな卑怯な手段を使ってもいいから、ひかるを手に入れたかった。

そのために、豪の借金を利用した。

自分が返済する代わりに彼女の前からいなくなることを条件に出して、ひかるから豪を遠ざけた。

「――ひかるさん」

延々と語っているひかるに耐えることができなくて、伊崎は名前を呼んだ。

(――僕は、あなたが欲しい…)

ひかるに向かって手を伸ばしたら、
「やめてください」

その手を振り払われたうえに、拒絶された。
< 85 / 115 >

この作品をシェア

pagetop