だから、笑って。
「そうだねえ、夏だと夏祭りが無難かな?」
先輩は仕事着のポケットから大人色のリップを取り出して塗りながら言った。
あっ、すごい発色がいい。
先輩の口元は一気に色っぽくなった。
「ん。例えばつけたことのないコスメに手を伸ばしてみるとか、髪型を変えるとか。まずは外観からでも背伸びしてみたらどう?」
そう言って先輩はポーチから小さなケースを取り出した。
「このリップ、先月のバイト代で買ったんだけどね、今思うと色とか大学生っぽくないなって思ったの。だから、菜乃花ちゃんの方が似合うと思うんだ」
そう言って新色のリップを取り出して私の唇に塗ってくれた。
「ほら」
鏡に目をやると、さっきまでとは別人のような私が写っていた。
リップだけでこんなに変わるんだ…。