だから、笑って。


頬を伝う涙を隠していた手に何かが触れた。




目の前には凜くんがいた。



「あんた、それだよ。辛く笑うなって」





泣きそうな声で凜くんは言った。






そして凜くんは私をそっと抱き寄せた。



凜くんの体温がじんわりと伝わってきた。






「辛そうに笑ってると、見てる人まで辛くなる。・・多分、あんたの兄さんは心の底から笑うあんたの笑顔が好きなんだと思う。だから、辛いときは泣いてもいいんだよ。笑おうとするな」





凜くんの温かい言葉に私はまた涙が溢れた。






凜くんは無言で私をぎゅっと抱いていた。









辛いときは泣いてもいい。


その言葉が私の胸に深く突き刺さった。



そう・・・だったんだ。




お兄ちゃん、私は今まで勘違いをしていたよ。





お兄ちゃんは心から笑う私の笑顔が好きだったんだね。




お兄ちゃん、私を愛してくれてありがとう。精一杯、守ってくれてありがとう。



私はもう大丈夫。



1人で抱え込まないで頑張るよ。


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