愛を知らない一輪の花

一方、百合は知らない道に悪戦苦闘しながらも配達業務を進めていた。

あと何件かで午前中の配達は終わる。



ゼンリンを広げ場所を確認していると、目の前に座り込んでいる老人を見つけた。
百合は車から降り、座り込みながら声を掛ける。

「どうされましたか?ご気分でも優れませんか?」

顔色は悪くなさそうだ。80代くらいだろうか。品のいい女性がゆっくりと顔を上げた。


「あらまぁ、綺麗な子だねぇ?いやぁ、具合が悪いんじゃないのよ。買い物に来て、久しぶりだからつい買い込んでしまって。バスに乗り遅れてここで次のバスを待っていたの。」


そう言う女性の横には、スーパーの袋が置いてある。バス停に行き、次のバスを確認するが、あと30分も後だ。
季節は12月に入り、寒い日が続いていた。


百合はまた女性に近づき、声を掛けた。
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