愛を知らない一輪の花
「お母さん!!!心配したのよ!朝から買い物に行ったっきり帰ってこないんだもん。」
焦る女性に百合は声を掛けた。
「久しぶりの買い物で、つい買い込んでしまったそうです。バスをお待ちになっていらしたのですが、当分バスは来そうになくて。、、、私、最近こっちの職場に移って来たばかりで、土地勘が全くないんです。丁度、そこの公園の近くに配達先があって、、、道を教えて頂きました。ありがとうございました。」
微笑みながらゆっくりと頭を下げた。
「そんな!とんでもない!、、、送って下さったのですね。本当にありがとうございます!心配していたんです。」
何度も頭を下げる女性に、申し訳ない気持ちになりながら百合は車に乗りこみ、ぺこっと一礼して配達業務に戻った。
女性はそんな車をじっと見つめ、見えなくなるまで見送った。