愛を知らない一輪の花

少し薄暗くなってきた外を見ていた、蓮のいる社長室の電話がなった。

「はい、松下です。お客様から電話?分かった。繋いでくれ。」

お客様からのクレームの電話はよくある。それを対応するのも社長である蓮の仕事だ。
今回もそうだろうと溜息をついて、受話器を取る。


「お電話変わりました。社長の松下です。」

「リス・フルールの社長さんですか?御礼のお電話をさせて頂きました。」


「御礼、、、ですか?」


疑問に思い、電話を掛けてきた女性に呟く。


「えぇ。今日、私の母を家まで送り届けてくれたんですよ。素敵な女性が。、、帰りが遅く、心配していたんです。配達の途中だったようで仕事中にもかかわらず、配達先が近くだったとかで。でも反対方向に帰っていくのを見て、きっとわざわざ送ってくれたんだと思います。
車の中でも、母の昔の話を、それは楽しそうに聞いてくれたそうで、とても喜んでいました。」
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