愛を知らない一輪の花

一方蓮は、初めてのデートに少し浮かれながら仕事を片付けていく。

この前接待で行ったキャバクラで、百合が引き抜かれそうな場面に遭遇して焦った。
まぁ、お陰で恋人同士になれて良かったが。

結局、強引に自分の物にしたが百合の戸惑った姿を思い出して、苦笑いした。



それでもやっとの思いで会社に引き込んだが、いまいち先に進めず遠くで見つめるだけの思いに比べれば、かなりの進歩だ。

そんな事を考えていると、社長室にノックの音が響いた。


「蓮、お疲れ。」

「あぁ、透。お疲れさん。どうした?」

「いや、仕入れ部に用事でこっちに来てたから本店に顔だして来たが、斉藤がいなかった。」

冷たいとよく言われるこいつは、なんだかんだで面倒見がいい奴だ。特に18歳から気にかけて可愛がっていた百合は、妹の様な感覚なんだろう。
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