友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
暗闇の中、ロフトの上からリビングを見下ろした。
玄関へ向かう廊下の入り口だけ、小さなオレンジ色のライトがついている。
のぞみは布団から腕を伸ばして、ボストンバッグの小さなポケットに手を入れた。
中から指輪を取り出す。
仰向けになって、左手を高く上げた。
指輪を薬指に通す。
それはすんなりと、いともたやすく、はめられた。
サイズはピッタリだった。
のぞみは指輪に口付ける。唇をつけたまま、堪えていた涙が頬を伝って、枕をぬらした。
嗚咽がこぼれる。
声を出さないように、きつく唇を結んで。
お互いに臆病で、お互いにややこしい。
これから先、琢磨ではない誰かを愛する日が来るとしても、きっとのぞみは琢磨を大切に想い続けるのだろう。
それが、他の人々にとっては、友情というラベルを貼られたものであったとしても。
きっと、大切に、彼を想い続けるのだ。