友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
「忘れ物ない?」
「うん」
二人で一緒にマンションを出た。
カバンの中には離婚届。
徒歩でゆっくり区役所へ向かう。
枯れた街路樹が、冷たい風に揺れている。
快晴。
「いい天気」
「うん」
二人は手をつないで歩いたことはなかった。
デートと言われることはしたことがなかった。
でも一緒にいた。
互いの気配を感じて、安心して、笑って。
楽しかった若き日を思い返して、この先も変わらず続く喜びを信じて。
まっすぐに歩いた。
だから、後悔なんて、しないんだ。