友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

「忘れ物ない?」
「うん」

二人で一緒にマンションを出た。

カバンの中には離婚届。
徒歩でゆっくり区役所へ向かう。

枯れた街路樹が、冷たい風に揺れている。

快晴。

「いい天気」
「うん」

二人は手をつないで歩いたことはなかった。
デートと言われることはしたことがなかった。

でも一緒にいた。

互いの気配を感じて、安心して、笑って。
楽しかった若き日を思い返して、この先も変わらず続く喜びを信じて。

まっすぐに歩いた。

だから、後悔なんて、しないんだ。


< 115 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop