友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

「どこ行く?」
桐岡が尋ねた。

「ビール」
のぞみは、今日できなかった昼ビールの欲望をあからさまにした。

野橋さんが難色を示したが、「いいよ、居酒屋?」と桐岡は了承した。

「焼き鳥がいい」
「いいよ」

桐岡は爽やかな笑顔を見せながら、野橋さんに「すみません」と謝った。
「今日は、お見合いになりませんでしたね」

「……お友達からスタートってこともありますし」
野橋さんは粘ったが、のぞみは「まさか」と一蹴する。

「こいつと何かはありえませんって」
「ないない」

二人は笑って「じゃあ、行く?」とホテルラウンジを後にする。

野橋さんは「はあ、じゃあ、おつかれさまでした」と力なく頭を下げた。
二人の背中を見送りながら、野橋さんはため息をつく。

「敗因はわたしのリサーチ不足。大学だけじゃなくて、高校までチェックすべきだったわ。ま、帰ってビールでやけ酒でもしよ」
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