友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

居酒屋に一番乗り。
週末の5時から飲もうっていう人は、そうそういない。

「らっしゃーい」
勢いのいい挨拶の後、二人は一番奥の席に通された。

のぞみの格好は、あまりにも場違いだ。一人だけフェミニンを全力でアピールしている。

向かい合わせで座ると、のぞみは「ビールとハツ!」と声を上げた。

「その格好で、そのメニュー。最強だな」
桐岡が笑う。

中ジョッキが二つテーブルにくると、カチンと小さく乾杯をした。

「お前しかし、写真詐欺だろ」
桐岡はカバンからお見合い資料を取り出すと、のぞみに見せる。
「これ、加工しすぎ。誰だかわかんねーって」

のぞみは肩をすくめる。
「わたしがしたわけじゃないもん。相談所が勝手にした」

それから自分もバッグから折りたたんだ資料を取り出した。

「見てなかったんだけど……へえ、桐岡、広告会社勤めてんの?」
「まあね」
ぐいっとジョッキを傾ける。

「なんでお見合いなんか? 広告会社なら誰でも選び放題じゃないの?」
「すごい偏見だな」
桐岡が笑った。

「んなわけねーだろ」

のぞみはじっくりと桐岡を見た。

高校生の頃の面影を残しつつ、大人になっている。
黒い髪。二重。通った鼻筋。右眉の下に小さなホクロがある。
当時からファンがいるくらい人気者だったけど、今でもそれは変わらなそうだ。
ついでに頭もよくて、天は二物を与えるとはまさにこのこと。
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