永く青い季節 〜十年愛〜


今までになく男っぽい彼の言い方と、爽やか過ぎる笑顔に私が動揺したのも束の間、ホームに響いたアナウンスの後、彼の乗る新幹線が滑り込んで来た。

これまでは、『新幹線』というものは、旅行などの楽しさの象徴だった。
いつまでも側にいたい好きな人を、連れ去っていく意地悪なものではなかったのに…。


不覚にも瞼の奥から涙が押し寄せ、私はそれが溢れて流れたりしないように、必死に瞬きを我慢した。


「バカ、泣くなよ。こんなの、“ 別れ ”じゃなくて、ただの挨拶程度の“ サヨナラ ”だぞ。
一緒にいた最後の顔が泣き顔じゃ、この先、俺、頑張れないよ。
だから、笑って。美織の可愛い笑顔、覚えておきたい」

彼は少し身をかがめ、大きな手で私の前髪をクシャクシャっと撫でた。
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