元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
船の修理が終わったときには、センナに着いてから二日が経っていた。
修理と一口に言っても、軍艦専門の船大工が居るわけでもないセンナでは、自分たちで応急処置をするしかないので、見た目は多少悪くなった。けど、航行するには全く問題ないという。
その夜、私は宿屋でクリストフに傷の抜糸をしてもらった。
少しチクリとしたけれど痛みはそれほどなく、傷は白い線のような痕を残したけれど、ケロイド状になることもなく治癒していた。
「これでよし。もう入浴しても大丈夫です」
隣で見守るレオンハルト様が安堵したように息をついた。
「思ったより、目立たなくなって良かった。入浴なぁ……させてやりたいけど」
センナの宿屋にあるのは大きな共同風呂ひとつ。お湯を張る時間は決まっていて、しかも短時間。私だけが貸し切るにはお金を払えばいいかもしれないけど、そこまでやると周りに不審がられそう。
お風呂に入れるのは、本国に帰ってからになりそうだな。無事に帰れたら、だけど。
ほとんど諦めている私を見て、クリストフが何か思いついたように上空を指差した。
「そういえば、この島には温泉が沸いているそうですよ。しかも一日中、一年中」
「温泉?」