元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
『うちの提督は頑固なのです。どうぞ、武勲はその手ひとつに納められますよう』
ベルツ参謀が追い打ちをかけると、メイヤー提督は憤慨しながら自分の船に戻っていった。
『やっと寝られるな』
静かになると同時、それぞれの部屋に散っていく幹部たち。私はレオンハルト様の部屋に向かった。ドアノブをつかむとそれは何の抵抗もなく回った。
『鍵もかけないなんて、不用心な……』
密偵が潜んでいたら危ないじゃない。
しかしその心配はなかった。レオンハルト様は既にベッドの中で、夢の世界に旅立っていた。
鍵をかけ、半分空いたベッドに近づく。自分の体力も限界だった。自ら重い軍服を脱ぎ捨て、レオンハルト様の横に潜り込んだ。
……とまぁそんな具合で、ヴェルナー艦隊はセンナに残った。メイヤー艦隊は結局モンテルカストまで戻り、皇帝陛下の司令を待つことにしたらしい。
現場の総指揮権はレオンハルト様にあるものの、彼が動かないとなれば、皇帝陛下から勅命が下るのを待つしかない。
「連絡船が本国まで行って帰ってくるまで、まだ4日はあるだろう」
レオンハルト様は悠々と船を直し、補給を整え、艦隊の再編成を考えていた。