元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

低い声が耳の中でこだまする。


──いつか、またどこかで。


返事はできなかった。私がこの姿でいるのはこの日だけと定められている。明日からは、私はエルザと名乗ることはできないのだから。

ぎゅっと胸が締め付けられるような思いを、生まれて初めて味わった。そんな私は、ただ小さくうなずいた。

名乗ることはできなくても、またどこかで見えることもあるだろう。そう信じて。



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