元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

レオンハルト様は国王の救出を計画しているのだろう。本来それは彼の仕事ではないけど、こんな卑怯な仕打ちに黙っていられる人でもない。

『俺は国王を解放するために、各所に働きかけるつもりだ』

せっかく統一しようとしている二国をより平和なものにするためにも、彼はもう少し戦わなければならないらしい。兵士や軍艦ではなく、利権を貪る貴族たちと。

『とはいえ、このままお前に会わずにいることに耐えられそうにない。明日の夜、誰にも秘密で会えないか』

今までの深刻だった内容から一転、その一行で私の心は羽根が生えたように軽くなった。

レオンハルト様に会える。手紙には場所や時間が指定されていた。明日も時間通りに仕事を終え、護衛を誤魔化せばなんとかなりそう。

「目が輝いていますよ」

クリストフが微笑んで私をからかう。しかしそのまま手紙を読み進めると、冷静にならざるを得なくなった。

『お前もしばらくは周囲を敵だと思った方がいい。俺はいわずもがな、貴族どもに敵視されている。副官だったお前のアラを探そうとする者もいるだろう。誰も信じるな。お前の秘密は、俺以外に話してはいけない。この手紙の内容もだ。親切な使者にも、漏らしてはいけない』

親切な使者?

手紙を読み終えて顔を上げると、灰色の目と髪をしたクリストフが、不思議そうにこちらを見つめていた。

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