元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

破壊されたドアに抱擁されるようにして、見張りの兵士も吹き飛ばされ、床に落下し気を失った。

「よう、元帥閣下! ざまあねえな!」

巻きあがる白煙の中から現れたのは、長いオレンジの髪を揺らしているライナーさんだった。

何故か陸軍が開発途中の対騎馬隊用バズーカ砲を担いでいる。あれで分厚い鉄のドアを鍵ごと吹っ飛ばしたのか。

「あれ、本当にルカまで一緒にいる」

「いいことだ。手間が省ける」

ライナーさんの後ろから、アドルフさんとベルツ参謀まで現れた。彼らは見慣れた海軍の軍服を着ている。

「みんな、どうして……」

「俺たちの提督と副官が捕まったって聞いたんじゃ、黙ってられないだろ。お前たちが皇帝陛下を暗殺したなんて、嘘に決まってる。下がれ!」

怒鳴ったライナーさんは懐から取りだした小さなピストルで牢の錠を打ち壊す。その間に倒れた見張りの兵士のポケットから鍵束を取り出すアドルフさん。

「奥の方だ。エカベトの国王陛下がいる」

レオンハルト様に言われ、こくりとうなずくアドルフさん。

「みんなは先に行って。俺は国王陛下を安全に逃がす」

「俺たちに囮になれってか。いい根性してるぜ」

にっと笑ったライナーさんが私たちを先導する。牢から出て階段を駆け上がると、皇居の長い廊下に出た。

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