元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
厳しいレオンハルト様の声が廊下に響く。
「しかも、話を少し聞かせてもらったが、戦闘が怖いだと? そんな臆病者は俺の軍隊にはいらない。謹慎が嫌なら、泳いで国まで帰るがいい。さあ来い、見送ってやろう」
長身のレオンハルト様がクリストフの襟をがしりとつかむ。そのまま甲板まで引きずって海に投げ入れてしまいそうな彼の軍服の裾をつかんだ。
「レオンハルト様、冷静になってください」
「俺はいつも冷静だ」
「では、その手をお放しください。私はもう気にしてません。ちょっと気持ち悪かったけど、いなくなってほしいとまでは思いません」
気持ち悪かったと言われ、クリストフはショックを受けたような顔をした。レオンハルト様は今度は私に呆れ顔を向ける。
「だが、それでは隊の規律が」
「こんな小さなことで部下を厳しく処分する、狭量な提督だと思われていいんですか? その方が兵士の士気に関わりますよ」
私を殺そうとか脅そうとかしたなら許さないけど、クリストフはちょっと変人なだけだもの。
医者を目指していたのに徴兵されてしまったという事情にも同情するし、戦闘が怖いのもわかる。誰か心の支えにしたかった。クリストフにとってそれがたまたま私だったというわけだ。