元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「ちっ」
レオンハルト様は舌打ちをし、クリストフの襟から手を放した。クリストフは首を押さえ、はあはあと大きく息をする。
「お前、ルカに救われたな。もう恩人に嫌がらせするんじゃないぞ」
「はい、申し訳ありませんでした」
まるで幼年学校の教師のような言い方のレオンハルト様と、素直に謝る生徒のようなクリストフ。
彼は無罪放免とされ、逃げるように走り去っていく。
「お前なあ……もう少し筋肉をつけろよ。後ろから抱きつかれて何もできないってなんだよ。もし敵と白兵戦になったら、真っ先に死ぬぞ」
「ですよね……」
誰もいなくなり、レオンハルト様が腕組みして私を見下ろす。
「仕方ないな。今後は常に俺の傍にいろ」
「えっ?」
「その見た目じゃ、同じようなトラブルが起きかねないからな。常に俺に張りついていれば、あいつみたいなおかしなのは寄ってこないだろ」
たしかにレオンハルト様が傍にいたら、下士官がやたらと話しかけてくるってことはなくなるだろうけど。
「どうしてだろうな。顔が似ているだけでエルザとは別人なのに、お前が俺以外の男に言い寄られているのを見るのは不愉快極まりない」
レオンハルト様は自問するようにぶつぶつと呟く。