元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
「撃て!」
その声が響いたと同時、敵軍の大砲が火を噴いた。少し遅れて、ライナーさんの主砲が放たれ、暗い海上に光の花を咲かせた。
身軽な敵艦たちはこちらの旗艦を取り囲むように前進してくる。それを船側面の大砲と後ろに並んでいる艦隊が砲撃した。
ライナーさんの主砲をもろに受けた船が真っ二つに折れ、海の中に沈んでいく。かと思えば敵の砲弾を受けたこちらの船が振動で揺れる。
「おっと。ふらふらしてると危ないぞ」
柱に捕まったレオンハルト様が、私を引き寄せて肩を抱く。今にも転んでしまいそうな私は、遠慮なく彼の体につかまった。
「よし、ゆっくりと後退せよ」
少しの戦闘のあと、レオンハルト様はそう命じた。敵の砲撃を避けながら、味方艦隊がそろって右斜め後ろに後退する。
そうすれば当然、敵艦隊は私たちを追い詰めるように追ってくる。
「ライナー、張り切りすぎるなよ」
「わかってるよ、提督殿!」
ある程度やり返し、後退を続ける。敵軍は追いつめてくる。
「時間だ」
レオンハルト様が胸から懐中時計を取り出し、時間を確認した。彼は風が強まりうねる海面に視線を投げ、にっと笑う。
「アドルフ、巻き込まれるなよ! 全艦、五時の方向へ前進!」