お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
彼と一緒に現れた美人も目を剥いたような顔をして、ちょっと…と言いたげな表情になった。


「メーワクなんて掛けてませんよ」


二人のことを視界に入れながら、驚きがサッと逃げてく。


どうしていつもこうなんだ。
私にはフツウに接してもくれない。


「私は此処にこの間の酒代を支払いに来たんです。そしたら先生が代わりに払ってくれたと聞いたから」


待ってた訳でもありませんよと言い足した。
単にビール一杯飲んでただけだ。


「なんだ、そうか」


納得したのか隣に座り、美人はその横に座った。


「エリナ、何飲む?」


やっぱりその人がエリナさんか。
それでもってドクターの彼女なんだよね。


「んー、何にしよう」


綺麗なソプラノ声。
女性っぽいなぁ。


「マスターお勧めのカクテルにして。あまり強くないの」


カクテル。
大人だぁ。


フン…とイジケながらビールを飲みきった。
それから隣を向いて、ドクターにあの時の酒代を払いますと言った。


「いらねーよ、別に」


マスターの言う通り稼いでるからだろうか。
余裕綽々な感じで断る姿にムッときてしまった。


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