お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
そう思うけど、それを口に出せば火に油。
ここはドクターの言うことを信じて早く解放された方がいい。


「なら私は帰りますから。ドクターもどうぞバーへ」


彼女の元へとお戻り下さい。
そんな気持ちで踵を返した。



「うっ…」


右足の向きを変えたらズキッと鈍い痛みを感じた。

電気の様なシビレが足の甲から爪先に向けて走り、直ぐに立ち止まりたくなったけど、ドクターの前でそれは出来ず。


そぉっ…と前に出してから左足を追い付かせる。
足を引き摺っては歩けない。
だから、自分としては細心の注意を払いながら前に進みだした。


盛り上がったアスファルトを横目にしつつ、一度ならず二度までも…と恨めしくなる。

だけど、今回は明らかに自分が悪い。
逆恨みのような気持ちを込めて、根っこを踏んづけてやろうとしたから。


(ホントに何処までもツキの無い)


苦々しい気持ちを抱えながら数メートル進んだところで、近付いてきた足音にビクッとした。


「ひゃぁ!」


急に足元が軽くなって声を上げた。
何が起こったのか分からず、慌てて身を起こそうとしたら……


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