お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
きったねーな、とカットバンの貼り方を貶し、そのヨレてグショグショになったものを剥がすから立てと言い出した。


「剥いだら痛いじゃないですか」


必死な抵抗を示す私に、アホか…と罵声を浴びせる。


「剥がなきゃ治療も出来んだろうが」


つべこべ言わずにさっさと診察室へ来い!と立ち上がり、背中を向けて歩き出した。
ポカン…と見てると看護師さんはやれやれ…といった顔つきでこう続けた。



「良かったですね。治療してくれるみたいですよ」


早くした方が良さそうな傷ですもんね、と同情しながら立たせてくれる。
その肩に掴まりながら右足を引きずって歩き、診察室のドアを潜った。



「先ずは寝て」


「はい?」


入るなりいきなり寝てと言われ、またまたポカンとした。
困った様な顔つきの看護師さんは診察台を指差し、あちらに横になって下さいと言い直した。


「ああ。はい」


それならそうと言ってよ。
寝てなんて言われたら何処へ?と思うでしょ。


よっこらせ…と診察台にお尻を付け、横になる前に健康保険証の提示を求められて渡した。



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