お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
教えると納得しながらも呆れる。
自分の知らない所で噂されるのもどうかと思うんだろうか。


「そうか。それで」


呟く彼のことはともかく、そのオペに呼ばれた子供が気になる。


「その子、どうしたんですか!?無事に手術は終わったの!?」


手を握りしめたまま訊くと、ドクターの首が縦に振られた。


「……ああ、まあな」


「そっか〜。良かった〜〜」


大きな溜息と共に声を吐き出した。
昨日は色々と複雑な心境にもなったけど、命が無事で何より。


「それよりも……悪かったな」


胸を撫で下ろてたらドクターがそう言った。

昨日その言葉を言わせたくないと思ったのにしまった。

油断した~!と思って目を向ければ、別れた時と同じように困った表情を浮かべてる。


それを見たらキュン…とした。
有言実行が出来なかった彼は悔しいのか、唇を開いて続けた。


「送っていくと言ったのに実行出来なくて」


眉尻が下がり、残念そうな顔つきを見せる。


まさかそこまで悔やんでるとは思わなかった。
ドクターにとって、自分は時間外労働をさせるだけのメーワクな患者なのに。


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