お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「二日分の治療費をよこせ」


そう言いたくなるのも分かりますよ。


「だから、最初から払いますと言ってるのに」


「…全く。何やってんだ一体」


ブツクサと文句を言いながらも湿布を貼ってくれる。
貼られた直後の冷たい感触は、直ぐに熱を吸い上げるかのように温もっていった。


「先生、脛の傷も診てあげれば?」


原さん、余計なことを言わないで。


「これは擦り傷だからいいです!」


カットバンで十分だと言ったけど、言い終わらないうちにさっさと剥がされてしまい__


「これが擦り傷か?皮捲れてるじゃねーか」


呆れながら消毒されて、ついでに傷薬まで付けられた。



「この足でよくここまで歩いて来たわね」


足首に包帯を巻きながら原さんが言う。
すっかり診療時間は過ぎて、またしても時間外労働をさせてる。


「帰り大丈夫?歩ける?」


朝よりも確実に腫れ上がった足首を心配される。
大丈夫です、と言ったけど鈍足でしか歩けない。


「先生、送ってあげたら?」


原さんはニヤついてドクターに聞いた。


滅相も無い。
マジで殺されるからやめて。


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