お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「どうせ午後から休むんでしょ」


「えっ?」


「オペ続きでダルそうだし」


ドクターの午前中の仕事ぶりを見て思ったんだろう。
気怠さを見透かされた彼は、少しだけバツの悪そうな顔になったけど__


「……いいよ。送ってやる」


午後も診療は休まないと言った。
原さんはちぇっ、と小さく舌を打ち、私に振り向いて「良かったわね」と囁いた。


「ランチでも奢って貰いなさいよ」


「いえ、とんでも無い!」


彼女のいる人にそんな…と言えば、原さんが不思議そうに首を傾げる。


「先生、いつから彼女が出来たんですか?」


白衣を脱いで私服のジャケットに袖を通そうとしてる彼に聞いた。
ドクターはこっちを振り向いて、何の話だ?と聞き返してくる。


「だって今、川島さんが言ったんですよ。先生には彼女がいるって」


私の知らぬ間に作ってー、とか話してる。
そんなのフツー看護師に言わないでしょ。


「俺に彼女なんているか!」


「えっ…でも、エリナさんと呼んでた人が…」


あの人は彼女じゃないの!?


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