お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
エリナさんというのはドクターの何だ。
病院の奥にある筈の母屋からやって来たように思うのに。

目線を合わせるとドクターは徐ろに口を開いた。


「あんたが言ってたエリナは妹だ」


「妹?」


「靖より三つ年下で、学校も重ならねーから知らなかったのかもしれないが、市民病院の外科でナースをしてる」


「ナース…」


「昨日の緊急オペの時に高速で玉突き事故があっただろ。
そのせいで患者の受け入れをしたらナースの人手が足りなくなって、急遽連絡して来て欲しいと部長から頼まれたんだ」


エリナさんは早出勤務を終えたばかりだったのに急にオペを手伝う羽目になり、それで二人してグチをこぼし合ってただけらしい。


「午前中はオペで、夕方からも…となると結構疲れるからな」


たかが盲腸炎のオペと言っても血液の少ない子供が相手だから…と話す。


「じゃ、あの…女神像みたいな人は!?」


身を乗り出すようにして訊くと、ドクターは目障りだと言いながら手を振る。

こっちは早く聞きたいのに…と焦り、じっと話しだすのを待った。



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