お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「とにかく電話を……あっ、そうか、ケータイが死んだんだ」


亀裂が入り、真っ暗になったディスプレーを思い出した。


どうすりゃいいんだ。
職場の友達にも電話が出来ないなんて。


「ううう。この痛みを堪えて帰るしかないのか…」


取りあえず、今は応急処置としてカットバンだけ貼ろう。持ってきたポーチには、それしか入ってないのだし。


「それに確か、傷の痛みは空気に触れるせいだと聞いたことがある」


それを信じて滲んだ傷の上からカットバンを貼り付ける。
小さいガーゼ面では収まりきらないから、三枚も貼ってようやく見えないくらいに隠された。


「少しは痛くない……かな?」


んな訳ない。

やっぱり痛いよ…と泣きっ面になりそうながらも、頼まれたスイーツをど根性で購入して社へ戻った。




「波南、あんたって何処までオモシロイの!」


同じ商品開発部で働くメンバーがお腹を抱えて笑い転げる。
こっちは膝の痛みに耐えながらもスイーツを買って帰ってやったのに。


「ひ〜っ、もうダメ…」


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