お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
スリッパを脱いで膝を伸ばして置いてみた。
ドクターは自分が置けと言ったにも関わらず、チッ!と小さく舌を打ち__


「やっぱりやり難い」


いや、あんたが置いてと言ったんだよね。


何度目かのツッコミを入れてたら、ぱっぱと包帯を解いた。

あれ〜止めて〜!と帯を解かれる町娘のような気分になる暇もない程素早くて、巻くのは出来ないくせに解くのは手際がいいんですね、と要らないイヤミを言いそうになった。


「こっちは順調だな」


さすがに三日目ともなれば傷も幾らか乾いてる。
痛みも無くなってきたし、腫れも赤みも減った。


「先生のおかげです」


「当然だろう」


謙遜とかいう言葉は持ち合わせてないらしい。
お笑いコンビの一人みたいに胸を張り、フン…と鼻息を吐いた。


(思いっきりやな感じ)


だけどイケメンなんだよね。
一々どんな顔をしてもカッコいいもんだからキュンとする。


(あーあ、こんな人が彼氏だったらいいのに)


過去に付き合ってきた相手を思い浮かべ、あれに比べたらこの人は毒を吐いても高性能だな…と納得がいく。

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