お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「靖いる?ちょっと病院の方へ来いって頼んで」


それだけ言うと受話器を置いた。
靖って誰よ、と頭の中で訊いてた。


ドクターは予め用意されてたカルテにスラスラと今日の処置内容を書きだす。
あのー、私は放置ですかー?とその背中に向かって問いたかった。



ドクターが書いてる間、キョロキョロと辺りを窺った。

消毒のニオイがする室内はスッキリと器具が片付けられてて清潔そうで、一体誰がこんなに綺麗に片付けるんだろうかと思い、それももしかするとあの原さんがやっていそうだな…と想像した。


藤田外科病院は開業から三十年以上経つとネットで検索すると載ってた。
開業したのはドクターのお父さんらしく、その人は今、医大で講師をやってる。

開院当時は外科だけでなく整形外科も兼ねていたそうで、それで院内には今も簡単な入院施設が整ってる。

ベッドは全部十床。小規模の病院にしては上等な方だと書き込みがあった。

ただ__



『院長の口が悪い』


ネットにはそういう内容やドクターが怒ってばっかで怖かった、という言葉が綴られてあった。

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