お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「実はこのメーワクな患者に包帯を巻いて欲しくてさ」


メーワクと称された私を見つめる彼に幻滅。
やっぱりやな奴…と思い直したところへ、弟さんが呆れたように声を発した。


「そんなことの為にわざわざ呼んだのか?」


呆れ返ってる。
まあ当たり前だけど。


「俺は包帯を巻くのが苦手なんだ」


知ってるだろ?と言うドクターに患者の私もだけど弟さんは更に呆れて__


「医者を辞めなよ」


うん、私も失格だと思う。


「まあそう言うな。小遣いやるから巻いてくれ」


「要らない。俺だってそれなりに稼いでるから」


兄には負けない雰囲気で言い返すと、弟さんの目線は私に向いた。
その顔を真正面から見た瞬間、お互いにアレ?と声を出し合い……。


「何処かで会いました?」


「それ、私も思ったところです」


何処だったっけ。
何だか懐かしい気がする。


「君、名前は?」


「川島波南と言いますけど…」


この人は確か「やすし」って呼ばれてた。

「ふじた やすし」
何処かで聞き覚えのある名前だ。


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