お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
手を貸してという藤田くんに向けて伸ばすと、彼の指先は原さんのように器用にクルクルと包帯を巻いていく。


「上手いね」


「ああ、これが仕事だから」


「え?」


「俺もドクターなんだ」


「えっ!そうなの!?」


あ、でも、そうだ。
学生の頃からすっごい秀才で勉強家で努力家だった。


「何科の先生?」


「整形。大学病院で働いてる」


「ウッソー!スゴい!」


大袈裟に驚いてる間に手は終了。
お次は足と言いながら屈み、クルクルと巻いていく。


「相変わらず足細いね」


「えっ…そう?」


そう言われると気分がいい。
兄よりもかなり褒め上手だ。


フン、と鼻息を荒くする声がして、ハッとして口を閉じた。
イケメンで毒しか吐かない人は詰まらなそうにしていて、その拗ねた雰囲気に少しキュンとした。


(バカバカ!あんなのにときめいてどーする!)


自分のことを呆れながら巻き終わったよと言って立ち上がる藤田くんにお礼を言った。


「ありがとう」


「いや、そんなことないよ」


いやー、あるある。
変わってないねー、そんな謙虚なところも。


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