お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「済んだのか?だったらもういいぞ」


母屋へ帰れと言わんばかりの言い方に藤田くんはさすがに少し呆れかけてる。

それでもさっきドクターが言ってたように夜勤明けだったらしく、それじゃあまたねと言って出て行こうとした。


「…ねえ、同級生のグループラインに藤田くんと会ったこと流してもいい?」


変わらずいい人だったよって。


「いいよ。俺も自分の方のに流していいなら」


「勿論いいよ。じゃあまたね」


包帯を巻いてもらった方とは違う左手をフリフリと振って別れた。
少し幸せな気分でいたのに、私の側にいるドクターがそれをぶっ壊してくれて。


「あんたも帰れ。治療は済んだから」


診察代は月曜日でいいと言いだし、自分は使った器具を片付け始める。

私と藤田くんが話してる間中、蚊帳の外に置かれてたのが気に入らないように見えて、それは何だか笑えそうになったんだけど。


「いつまでいるんだ。追加料金を貰うぞ!」


ドスの効いた声にビクッとした。
サッと立ち上がって一応深々と一礼した。


「どうも、ありがとうございました!」


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