お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
「波南、これほっとくと化膿するよ」

「今直ぐ病院に行きなさい」


先輩達が覗き込み、痛そう…と呟きつつも傷口を触ろうとする。


「サド!止めて!」


慌てて膝を隠したから、もろに傷口を触って激痛が走る。


「くぅ〜〜っ!」


ジュースじゃないよ。…んなの言わなくても分かるか。


「波南、特別に有給やるから病院へ行っておいで。歩くの無理そうなら今日はもう帰っていいから」


「でも〜〜」


今日は大事な会議があるのに。


「でもも何もないでしょ。波南がプレゼンする予定の商品は私が代わりにしておくから」


とにかく病院へ行くこと!と村田さんに言い渡され、遣る瀬無い気持ちを抱えながらも有給を貰った。

オフィスの前まで柑奈に肩を借りて歩き、止めてくれたタクシーに乗り込んだまでは良かったんだが。



「何処まで?」


バッグミラー越しに運転手さんに聞かれ、えーと…と悩んだ。

うーん…と頭の中で迷い、そう言えばさっき転んだ場所の側に外科があったような…と思い出した。


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