お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
カチンときたけど我慢我慢。


「意味なく笑ったりしませんよ。ちゃんと良いことがもあったから嬉しくて」


「あら。いい事って何?」


すっかり常連な私に原さんも砕けた口調で話しかけてくる。

実は昨夜おにぎりを買った近所のコンビニで具の梅干しが入ってなかった…とクレームを言ったんだと話して聞かせ、そこの店長さんが気の効く人で…と続けた。


「申し訳ないと謝ってくれて、お昼用にと買ってたお弁当をタダにしてくれたんです」


「あらー、ツイてるじゃない」


「そうでしょ〜?この最近ずっとツキから見放されてたから嬉しくって」


二週間以上ツキなしの日々だった。
ようやく運勢も上向きに変わったのかなぁと呟けばそれを聞いてたドクターが一言。


「そんなの当然だろう。恩を売っとけばまた買いに来て貰える訳だし」


あんた単純そうだからな、と意地の悪そうに笑いだし、こっちの幸運に水を差さないで!と願った。


「ドクターは誰にでもそんな感じの話し方なんですか?」


ムッとして訊ねると、ピクッと眉尻が上がる。


「恋人にもそんな感じだとしたら嫌われますよ」


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