お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
とにかく、この痛みから解放してくれればいいんだ。
病院前で転んだのは仕様がないことだし、そもそもそれは自分の不注意が生んだ結果でもあるし。


「しかし…この階段がネックだなー」


玄関ドアの前にある五段の階段。
膝を伸ばしたまま上るのは不安定だし、スロープはあるけど年寄りでもないし。

まあいいか…と思い、左足から乗せた。
左右、左右…と頭の中で号令をかけてやっと上ったというのにーーー



「ウッソー!午後は休診!?」


開けろー!と怒鳴りたくなる。お礼参りならぬ呪いの言葉を掛けてやろうか。



「もしもーし!開けてー!」


自動ドアの隣にあるインターホンを連打する。
診療時間は十二時半までだけど、回ってまだ間もない筈だからきっと誰かがいると思う。



「………はい、どうしました?」


仕様がねーな、という雰囲気の気怠そうな声が聞こえてきた。ツイてない私だけど、超ラッキー!と嬉しくなった。


「すみません!病院前の街路樹の根っこですっ転んだ者です」


「はあ?」


「膝を強かに打ち付けて痛くて全く歩けません!どうか治療をして下さい!」


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