お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
笑いも引っ込む。
そこに村田さんが出社してきて、おはよー、と皆が挨拶した。



「おはよう」


少し暗めな声が戻った。
村田さんは私の浮腫んだ顔を見つけ、きゅっと唇を噛みしめた。


「ねぇねぇ、むっちゃん聞いてよー」


先輩の一人がドクターの車に乗せられて私が出社してきたことを教えた。
バーでやけ酒を呷ってたことを知ってる彼女は、聞き終わってからチラッと視線を投げ掛けてきたけど__



「…そう」


一言言ったきり仕事に入った。
素っ気ない態度に皆は興醒めして、やっと質問攻めから解放された。

ふぅ、と重い溜息を漏らしてデスクに着く。
二日酔いの頭痛が残る私に比べ、村田さんはいつも通りシャキシャキと背中を伸ばして働いてる。


彼女には私の為に尽くしたという自信があるんだろう。
それに比べて私は、いつまでも蟠りを持ち続けて情けない。


悔しいんなら今度は自分が自信を持ってプレゼン出来るように知識や経験を積み上げていけばいいんだ。

村田さんに後押しされなくてもいいように、少しずつ努力していけばいい。



……さっき、車を降りる時にドクターからも言われた。


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