九魂猫骨董品店
…手に握られてる彫刻を見詰めながら、
私は身震いをした。
たかが物忘れ、されど物忘れ…
末恐ろしい底の底だ…
「さて、私の話は終わりですわ。長らくお付き合いありがとうございました。」
ニコリと笑いロウソクを消し、片付けを始める店主。
私はまだ小話と現実の合間のようにいる…
「あの…これお幾らですか?」
身震いを起こす程の小話、なんて結局作り話だろうと思い、何故か心惹かれる彫刻を購入しようと試みる。
「その彫刻ですか?そうですねぇ、お客様は初めてですしねぇ…なら13000円でよろしいかしら?」
思いの外…と言うよりも値札よりも大分引いてもらっていた。
もちろん答えはOK、私の心は弾んだ。
会計が終わり、店主はこう言ってきた。
「蛇神様は寂しがりですわ、三日に一辺はお話してあげてくださいまし…」
少し物憂げな面持ちなのが気になり、私はこう答えた。
「わかりました、任せてくださいよ!」
そして荷物を持ち店を出た。
後ろから
「またお会い出来るのを願っておりますわ」
ドキッと来るそのセリフに後ろを向くと…
見慣れた道が続いていた。
「あ、あれ?え?」
気付けばここは自宅から目と鼻の先の場所。
まるで夢を見ていたような感覚に陥った。
だけど、左手に持つこの彫刻と九魂猫骨董品店の紙袋が有る。
夢では無い、あれは現実にあった店で…
そう考えながら私は自宅に向かい歩き始めた…