九魂猫骨董品店

…手に握られてる彫刻を見詰めながら、
私は身震いをした。

たかが物忘れ、されど物忘れ…

末恐ろしい底の底だ…


「さて、私の話は終わりですわ。長らくお付き合いありがとうございました。」

ニコリと笑いロウソクを消し、片付けを始める店主。


私はまだ小話と現実の合間のようにいる…



「あの…これお幾らですか?」

身震いを起こす程の小話、なんて結局作り話だろうと思い、何故か心惹かれる彫刻を購入しようと試みる。


「その彫刻ですか?そうですねぇ、お客様は初めてですしねぇ…なら13000円でよろしいかしら?」

思いの外…と言うよりも値札よりも大分引いてもらっていた。
もちろん答えはOK、私の心は弾んだ。


会計が終わり、店主はこう言ってきた。


「蛇神様は寂しがりですわ、三日に一辺はお話してあげてくださいまし…」

少し物憂げな面持ちなのが気になり、私はこう答えた。

「わかりました、任せてくださいよ!」



そして荷物を持ち店を出た。

後ろから

「またお会い出来るのを願っておりますわ」


ドキッと来るそのセリフに後ろを向くと…
見慣れた道が続いていた。

「あ、あれ?え?」

気付けばここは自宅から目と鼻の先の場所。
まるで夢を見ていたような感覚に陥った。


だけど、左手に持つこの彫刻と九魂猫骨董品店の紙袋が有る。
夢では無い、あれは現実にあった店で…

そう考えながら私は自宅に向かい歩き始めた…


< 10 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop